Maison de Luce Story
1
しばらく時が経ち食べられないお菓子を並べた洋菓子装飾店
「メゾンドルーチェ」も少しずつ賑やかになってきました。
いつもはお店の上の部屋で二人で仲良く食べられないお菓子を作っているのですが
お客様が来る時間はお店でヴィフがお相手を
上の部屋でヴィヴが食べられないお菓子を作っていました。
何日かに1度、お店が忙しい時には
上の部屋からヴィヴも降りてきて
一緒にお客様のお相手をしていました。
今日も何日かに1度のお店が忙しい日です。
「ヴィヴ!お客様がたくさんいるんだ。
下の部屋に降りてきて手伝ってほしいよ!」
ヴィヴが窓から顔を出し、上の部屋に向かって話しかけました。
ヴィフの呼び声はヴィヴに届き
「分かった。今すぐ降りていくよ。」
と言って階段をぴょんぴょんと降りていきました。
下の部屋には珍しくお客様が次々とやってきて
ヴィヴはなかなか上の部屋に戻れずにいました。
しばらくすると上の部屋のオーブンから
モクモクと灰色の煙が立ち始めました。
灰色の煙はモクモクモクモクとお菓子づくりの部屋を
灰色に変えていきます。
するとオーブンの上から慌てた様子の小さな2つの声が
聞こえてきました。
「大変だ!このままだとおばあさんの家とお店が燃えてしまう!」
「どうしよう。おばあさんの家とお店と僕たちも燃えてしまう!」
「よし!僕たちでオーブンを止めよう!」
2つの声たちはすぐにオーブンを止めることができたようです。
「ふぅ。良かった。このままだったら洋菓子装飾店の丸焼きができてしまうところだった」
「ふぅ。助かった。このままだったら僕たちの丸焼きができてしまうところだった」
と、安心したような声で話しています。
上の部屋の煙に気付いたヴィヴとヴィフは、
慌てて駆け上がり、灰色に染まったお菓子づくりの部屋を
注意深く通り抜け急いで窓を開けました。
灰色の煙が少しずつ外に流れていき
部屋の中が明るくなるとポツンと2羽の文鳥が姿を現しました。
「君たちはお婆さんが大事にしている木彫りの双子文鳥じゃないか」
ヴィヴは驚いた様子で話しかけました。
ヴィフも少し驚いた様子で
「確かトワとモワと名付けられていたよ」
「そうだそうだ、トワとモワだ」
すると文鳥は声を揃えて言いました。
「そうだよ、僕たちはトワとモワ。」
「危うく火事になるところを僕たちが止めたんだ。」
とトワが呟くと
「危うく僕たちの丸焼きができてしまうところだったよ」
とモワが大きな声で言いました。
ヴィフとヴィヴが申し訳なさそうに顔を見合わせていると
「ねえ、君たち忙しいなら僕たちが火の番をしてあげるよ」
とトワが言い
「僕たち燃やされたくないから火の番をしてあげるよ」
と続けてモワが言いました。
ヴィフとヴィヴはとても喜んで
「じゃあお願いするよ!」
と声を揃えて言いました。
こうしてこの日から、双子の文鳥トワとモワが
メゾンドルーチェの仲間として働くことになりました。